前回家族が職場でパワハラを受けているかも…
とご相談させて頂きました。
しろすけ先生のアドバイスに基づき
夫の気持ちを労りつつ確認をしてみたところ
やはり客観的に見てもパワハラだと感じています。
適切に対処したいのですが、
具体的にどこに相談すればいいのでしょうか??
旦那さんのご様子が心配ですがいかがでしょうか??
パワハラによる心身へのダメージは
想像以上に深刻になることもあります。
しっかりとケアしていきましょう!
※前回の記事はコチラ
パワハラの具体的な相談/支援先について
実際にパワハラが起きていた場合
どこに相談をすると良いのでしょうか??
相談窓口が設置されている場所と
それぞれの特徴に触れてみましょう。
労働環境の相談先として
勤めている企業の上司や人事等
まず、実際に問題が起きている
職場そのものに相談するケースが考えられます。
というのは
企業はパワハラ防止法により
以下4つの措置を
義務として講じなければいけません。
②相談対応に必要な体制整備
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④相談者のプライバシー保護、不利益取り扱いの禁止
そのため人事部等に
ハラスメントに関する相談窓口を
設置している企業も多くあります。
上司や人事等に相談することで
などが実施されることで
パワハラへの是正や環境改善が
なされる可能性も出てくるでしょう。
ただし…
企業の内側での対応となるため
秘匿性が強く中立的/客観的に
対応がされるかは企業次第とも言えるでしょう。
など、企業側優位で処理される可能性も…
相談する場合は企業の対応や姿勢を見極めつつ
対応することが必要と言えるでしょう。
労働基準監督署
『労働環境に何か問題があれば労働基準監督署へ』
と思われがちですが…
労基署はそもそも
労働基準法等を企業が遵守しているか
監督することを目的としている機関です。
そしてパワハラ等ハラスメントについては
実は労働基準法で明確に定められているものではないため
積極的に介入されることはありません!
ただし、パワハラを要因とする
などの労働基準法への違反については
介入の対象となり調査や勧告、指導が行われる可能性があります。
こうした労基法違反に伴う
労働問題が是正されることで
副次的にパワハラの環境も是正される
といった可能性もあるかもしれません。
が、あくまで
労基法の違反への是正が目的であり
相談者の救済や個別紛争の解決を
直接的な目的とした機関ではありません。
そのため相談するのであれば
目的に応じて利用をするのが良いと言えるでしょう。
総合労働相談コーナー/労働相談情報センター
各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内に
労働問題の相談窓口である総合労働相談コーナーが
設置されています。
(※2022年5月時点で379カ所設置ー厚労省Hpより)
ここは
✅賃金の引下げ等条件に関わる問題
✅募集 / 採用に関わる問題
✅いじめ / 嫌がらせ / パワハラなどの環境問題 など
あらゆる分野の労働問題を対象とし
相談者へ解決のための情報提供を行っています。
また、紛争当事者による自主的な解決を促進するため
都道府県労働局長による助言・指導が行われることも。
さらに、助言や指導で解決しない場合には、
あっせん制度を利用することも可能です。
労働問題の専門家が属する紛争調整委員会が
紛争当事者の言い分を聞き、話し合いの仲介をし
紛争解決の斡旋を行ってくれる制度。
無料で利用ができるため
裁判に比べれば簡易的に利用ができます。
ただし強制力・法的効力はないため
相手が応じなければ合意ないまま終了に至ります。
またメリットとして
など支援を受けやすい環境になっています。
労働問題の専門的なスタッフにより
客観的に支援を受けることができため
相談しやすい場所と言えるでしょう。
ちなみに…
パワハラは受けている側も
自分が過剰に反応しているだけかも…
こうした不安や悩みを抱え
客観的な意見を聞きたいという事例もあるかと思います。
こうした相談も可能なので
初期の段階からも安心してご利用できますよ。
※参考:総合労働相談センターへのリンク↓
また地方自治体によっては
別途独自の相談先を設けていることもあります。
お住いに合わせて利用しやすい場所を
ご利用するのも良いでしょう。
例)
東京都:産業労働局の労働相談センター
大阪府:大阪府労働環境課の労働相談センター など
法的に戦うなら
法テラス / 法律事務所(弁護士)
当事者同士の話し合い等で解決に至らない場合
法的な手段をとるケースもあります。
その場合は法律事務所が相談先になることでしょう。
こうしたメリットが考えられ、
企業やパワハラ加害者と抗戦するには
力強い味方になることでしょう。
ただし
結果として必ずしも勝てるとは限りません。
また抗戦するにも
パワハラは証明が難しく
証拠集めで労力を使ったり
交渉の過程で嫌な思いをすることも…
弁護士を介し抗戦していくのであれば
体力・気力・意志・お金が必要になってくるため
目的を見定めて利用すると良いでしょう。
なお、お金に余裕がなくて
法律事務所へ直接相談するのが難しいという場合は…
日本司法支援センター(別称:法テラス)で相談が可能です。
などメリットがあり
相談段階でお金に余裕がなくとも
法的な相談 / 措置を講じていくことも検討することができます。
ただし
など
利用には条件が設定されており
依頼できる弁護士も限られるといった側面も存在します。
事前に理解をした上で利用するようにしましょう。
メンタルのケアとして
精神科の医療機関
✅食欲がなくて食べれない(食べても美味しいと思わない)
✅憂鬱な気分がずっと続く
✅何をしていも楽しくない
こうした精神症状が見られるなら
精神科の扉を叩いてください!
まだできる…
そう感じられていても
実際には心身が危機的状況とも言えます。
また自身のことや周囲の状況を
正確に判断できない状態に陥っていることでしょう。
ご自身の心身の状態を
第三者に客観的に評価してもらうためにも
精神科へご相談下さい。
そして精神症状を正確に把握し
通院しながら適切な治療を受けましょう。
ちなみに…
ご本人が不調に気付けない場合もあります。
その場合
身近にいるご家族やご友人からのお声がけが助けになるでしょう。
ただし突然
『調子悪そうだから精神科に受診したら?』
と促されるとご本人がショックを受けてしまうことも…
『最近苦しそうだけど辛いところはない?』など
ご本人の困りごとを解消するという
アプローチをしてみて頂ければと思います。
こころの耳
『こころの耳』とは
厚労省から委託を受けた
日本産業カウンセラー協会が運営するポータルサイトのことです。
職場のメンタルヘルス対策を目的として運営されているため
メンタルヘルスに関わる情報提供とともに
メンタルヘルスに関わる相談窓口も設けられています。
✅人間関係に関わる悩み
✅仕事に関わる悩み
などメンタル的な不調や悩み事を
電話 / SNS / メール等を用い相談することができます。
医療に準じることは対応できませんが
産業カウンセラー等に悩みを聞いてもらうことが可能です。
※参考:こころの耳へのリンク↓
パワハラへの対応・対策・方針について
さて、上記にて相談先や支援先について
ご紹介をしてきました。
相談し支援を受けながら
パワハラに対する対策を講じていくことになるでしょう。
ただし、最終的な方針を決めておくことが大切です。
【 戦う or 逃げる 】
どちらにしますか??
こう言うと
え…こちらは被害者で
ひどいのは向こうなのに
なんで逃げないといけないの??
と思うかもしれませんが…
『パワハラにより辛い思いをしている』
ご本人にとって、ご家族にとっても
そのことを知ってもらい改善してもらいたい!
と思うのは当然のことではあります…
しかし戦うためには
自身が経験した苦しい事例を振り返ったり
今もまだその環境に身を置かないといけないかもしれません。
古傷を抉られるような苦しい作業をしたり
かなりの精神的負荷を受けるかもしれません。
それを証明し戦う場合、
体力・気力・意志・お金なども必要になってくるでしょう。
また、絶対的に勝てるとも限りません。
そうした労力を鑑みた場合
『なるべく早く撤退する』
というのも戦い方の一つと考えます。
特に医療者としては、ご本人の回復を優先する身。
心身への負担が少ない戦略的撤退も
間違いではないと思っています。
ご本人の意志も尊重しつつ
冷静に状況を見て決定しましょう。
もし戦うと決めたら…
✅総合労働相談センター等公的機関に相談して介入を行ってもらう
✅法的手段を用いる
このように
パワハラの環境を改善したり
法的手段を用いて戦う場合は、
『パワハラを受けている』という
物的証拠が必須になってきます。
そのため
②写真やビデオ画像
③メールやSNS等での通信記録
④同僚の証言
⑤被害を受けた際に作成した日記やメモ
以上5点のうち
証明になりうるものは必ず保管し残しておくようにしましょう。
具体的な物証を持っておくことで
『自身の勘違いや受け取り側の問題である』
という反論ができなくなり自身の優位が保てるようになります。
ただし…
相手側もそうした証拠集めに抵抗をしたり
廃棄や削除をしてくる可能性もあります。
準備していることはできる限りバレないよう
油断せず注意をしながら集めるようにしましょう。
時にパワハラの被害の証明として
【医師の診断書】が挙がるケースがあります。
患者さんからも相談を受けることもありますが…
『精神症状が出て治療をしていること』
『パワハラを受けたこと』
この2点の因果関係を医学的に証明することは
非常に困難であると言えます。
そのため、
その両者を結びつける診断書を記載してほしい!
と希望を頂いても残念ながら
『書けない』と言わざるを得ません。
これは患者さんの
味方をする / しないという話ではなく
因果関係を証明できないことを文書にすると
公文書偽造に問われるからです。
もちろん
・診断名や精神症状の有無
・治療により休職を要する状態か否か
・治療期間としてどの程度の見込みが必要か
など現症の内容であれば記載は可能ですので
ご相談下さい。
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もし逃げる場合…
戦略的撤退を行うのであれば
なるべく早く休職、あるいは退職し
次の職場を探していきましょう。
ただし転職活動をするには
少なからず時間を必要とする上
体力・気力も使います。
ただでさえパワハラの環境の中で
心身ともに疲弊しているため
転職活動に力を注ぐのが困難であるかもしれません…
もし心身ともに疲弊しているのであれば
まずは精神科へ受診し
医師へ休職のための診断書を記載してもらえるか
相談をしてみるのも一つの手段でしょう。
また、転職活動や退職の手続き等については
エージェントや代行サービスを利用することで
負担を減らすこともできます。
パワハラの環境から
早期に脱することも大切ですが
急ぎすぎて転職先選びで失敗した…
そうしたことが起きないよう
自身1人で抱え込まずできる支援は活用していきましょう。
まとめ
以上、パワハラの相談先や対応についてご紹介をしました。
パワハラを受けている方は
現在とても苦しい想いをされていると思います…
しろすけは精神科医として
ご本人の心身の健康が一番大切だと思っています。
・精神的な不調を相談できる場を提供すること
・心身の回復を図るため適切な医療を提供すること
これが精神科医としての役目でもあります。
パワハラに慣れている人などいません!
休職や治療に慣れている人もいません!
孤独な戦いにならぬよう
医療者としてできる支援がありますので
パワハラで悩んでいる人は心身のケアとして
精神科医を頼っていただければと思います。
またどの相談先よりも
一番の力になるのはご家族の存在でしょう。
ご本人が良い状況になれるよう
傍でご支援いただければと思います。