介護申請:初めての申請でも適切に認定が出るためのポイント【その①】

介護

高齢になってくると
体力の低下や疾病等の影響により

・一人では家事を行うのが困難
・家族とは同居しているがサポートが受けにくい

など、日常生活を維持するのが困難になってくることがあります。

その際に活用できるのが介護保険サービスです!

介護保険サービスって使うと介護の方が来るんでしょ?

家族ならまだしも、他人にお世話になるのは…

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しろすけの持論ではありますが…

しろすけ医師
しろすけ医師

介護支援を受けることは、自分の生活を他人に見せることにもつながるので

恥ずかしい/信用できないという思いも出ることでしょう。

 

ただ無理に独力で生活したり、家族の支援のみ頼ることは、自身のQOLの低下や家族関係がギクシャクする原因にもなることもあります。

 

サービスの利用頻度や支援内容の程度は利用者に合わせて調整できるので、
介護保険サービスを有効的に活用し『心身の余裕』を持つことも精神科医としては、とても大切なことだと思っています!

ということで、
今回は介護保険サービスの利用にあたり、
申請時に押さえておくべきポイントを解説したいと思います。

介護保険サービスって申請するだけでは利用できないのですか?
何か注意点とかあるのでしょうか?

と思われた方…

確かに申請すれば手順は進んでいきますが、
介護保険サービスを利用するには調査と審査が行われます。

その調査と審査で
現状や予測される困り事の評価をしてもらえること
がとても大切です。

申請後なんとなく進めるのと
困り事や支援してもらいたいことを明確にして臨むのでは
その後の調査や審査で結果が変わってきます。

特に初めて申請する方はこちらの記事の一読をオススメします!

スポンサーリンク

介護保険サービスの利用対象と申請のステップ

介護保険サービスの利用対象

■介護保険のサービスを利用できる人は次のとおりです。
  1. <65歳以上の人>(第1号被保険者)
    → 寝たきりや認知症などにより、介護を必要とする状態(要介護状態)になったり、家事や身じたく等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)になった場合。
  2. <40歳~64歳までの人>(第2号被保険者)
    → 初老期の認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる病気(※特定疾病)により、要介護状態や要支援状態になった場合。

※介護給付や予防給付のサービスを利用するには要介護(要支援)認定を受ける必要があります。

引用:厚生労働省『介護サービス公表情報システム』より抜粋

※詳細を知りたい方はコチラ
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/about.html

申請のステップ

介護保険サービスを利用するにはstep1~7の流れとなっています。

step.1 要介護認定(要支援認定を含む)の申請
step.2 主治医に主治医意見書を記載してもらう
step.3 介護認定調査を受ける
step.4 審査判定
step.5 認定
step.6 介護(介護予防)サービス計画書の作成
step.7 介護サービス利用の開始
※詳細を知りたい方はコチラ
スポンサーリンク

適切な評価を受けるためのポイント

先にご紹介した各stepのうち、
『申請をした方がどの程度介護を必要とするか?』は
stepの2と3で調査されます。

・主治医が記載する主治医意見書
・市役所の介護保険課が行う介護認定調査

審査判定に大きく影響し適切な判定(介護区分)を得る
この2つを抑えることがポイントになってきます。

けど主治医意見書って医師の先生が書くものですよね。
介護認定調査も役所の方が調査されるのなら、
具体的に私は何ができるのかしら?

しろすけ医師
しろすけ医師

順番にお答します!

まずは主治医意見書について。

 

確かに医師が記載するものです。

ただ

・どの医師に書いてもらうか?

・医師にどこまで普段の様子や困り事等を詳細に伝えれるか

 

この2点により、主治医意見書の内容がグッと変わってきます。

さらにポイントを解説していきましょう。

 

 

ポイント1 主治医意見書の医者選び

主治医意見書には、主たる疾患名、従たる疾患名を記載する欄があります。

つまり介護保険サービスを利用する原因となる主の疾患
= 一番介護を必要とする疾患名 を記載することになります。

この主の疾患をどれにするか?
どの医者にかいてもらうか?
これが非常に重要です。

そもそも、65歳以上の方が
複数の診療科に通院していることは医療現場ではよくあることです。

例えば

・高血圧と高脂血症で内科
・前立腺肥大で泌尿器科
・アルツハイマー型認知症で精神科
・脊椎の圧迫骨折で整形外科

などなど

さてここで質問です。

内科・泌尿器科・精神科・整形外科など
複数の科を通院している場合、
どの先生に主治医意見書の記載を頼むのが良いでしょうか?

どの科も定期的に通院しているなら
どの先生でもいいのでは?

違いはないように感じますが…

しろすけ医師
しろすけ医師

主治医意見書の記載は診療科が限定されることはありませんし
定期的に通院される医療機関があればどこでも書いてもらうことはできるでしょう。

 

決して正解があるものではないのですが…

しろすけ医師
しろすけ医師

【一般論しろすけ】

例えば、圧迫骨折が原因により介護保険サービスを使いたいという場合は

整形外科の先生に依頼するのが良いでしょう。

基本的には

日常生活を営む上で介護を必要とする主たる疾患を決め、
その診療を行っている医師に記載を相談するが妥当です。

※圧迫骨折だけど内科の先生の方が依頼しやすいからそちらに書いてもらおうというのはやめましょう。

ここからはあまり大きな声で言えませんが…

しろすけ医師
しろすけ医師

【しろすけの見解】

『ご本人がより多くの介護保険サービスを受けれる可能性』を鑑みると、

認知症の診断を受けている(もしくは認知症疑いの)場合は
精神科の医師に記載をお願いするのが良いでしょう。


・主治医意見書

⇒ご本人の認知機能低下に伴う日常生活社会生活の困り事を訴える


・介護認定調査

⇒ご本人の活動性低下に伴う日常生活社会生活の困り事を訴える


この手法が必要な介護保険サービスを受ける近道と考えているからです。


認知機能の低下は身体機能の良し悪しに関わらず、
全ての日常生活に支障をもたらすため、
介護区分(介護を必要とする度合い)も比例しやすい傾向です。


実際、主治医意見書の記載項目には
認知症の中核・周辺症状を問う項目が単独で設けられている点からも
評価するポイントになっていることが見て取れます。

 

そのため認知機能低下が伴う認知症は介護保険サービスを利用する上でユウコウな…
(以下自粛)

 

ポイント2 どんな情報を医師側が必要としているのかを把握する

主治医意見書の記載をお願いしたら
すごく嫌な顔されちゃった…

こんなことを耳にしたり体験されたことありますか?

なぜこうしたことが起こるのでしょう。
それを探るため、ちょっと医者の頭の中をのぞいてみましょう

しろすけ医師
しろすけ医師

数ヶ月に1回しか会わない人の主治医意見書を頼まれた…

書きたくないわけではないけど、
主治医意見書に必要な情報が手元にない…

情報を集めるには対応できるスタッフもいないし、
診察時間内で情報集めていたら、次の方の待ち時間が伸びちゃう!

困ったー!!

実は嫌なのではなく、困っているのですね。

ならどうすると良いでしょう?
諦める?
他に通院しているところがあるならそちらに書いてもらう?

いえいえ、逆にこちら(患者家族側)が
主治医意見書に必要な情報を準備して、
記載する医師に渡しておけばいいのです!

ポイントその2は
『主治医意見書を書く上でどんな情報を医師側が必要としているのか』
記載してもらう側が把握し準備することです。

医療や介護のこと何も知識ないけど…
準備できるかしら?

しろすけ医師
しろすけ医師

必要事項に難しいことは一つもありませんのでご安心ください!

必要事項は大きく分けると5つです。

①精神科以外への受診情報について
②受診/発症までの経過
③外出・移動状況について
④社会生活について
⑤それ以外にご家族の困りごと

それぞれ詳細を見ていきましょう。

精神科以外への受診情報

例えば皮膚科や整形外科に受診中など。

オススメは直近のお薬手帳を準備することです。
※使っていない方はぜひ利用開始して下さい。

内容を見れば何科に通院しているのかわかる上、
他の科の処方内容もわかるためお薬手帳は非常に重要な情報源です。

病院受診するまで もしくは 発症するまでの経過

医師が困るのは
『いつ頃からどのような症状があったのか』
を把握できない場合です。

特に認知症、とりわけアルツハイマー型認知症などは
非常に緩徐に進行するため、ご家族も把握しにくいところです。

だからといって、
『気がついたらこんな感じでした。特に兆候もなかったです』
と言われてしまうと

しろすけ医師
しろすけ医師

これじゃあ、主治医意見書の発症経過が何も書けないよ…
身近で見ていたなら、もう少し『あれ?おかしいな?』と思ったこととかを頑張って思い出してくれないかな…

と医師も思うことでしょう…

・いつ頃から『あれ?様子が変だな?』と思うようになったか
・いつ頃から困った症状が出始めたか
(例えば声を荒げるようになったetc)

で構いません。

いつものご本人なら行わない言動が大事なキーポイントです。

そうした言動と時期を覚えておくか、
できれば簡易的にメモしておくことをオススメします。

もし、一緒生活してなくてどうしても経過がわからないのであれば…
直近半年の様子を医師に伝えましょう!

厳しいことを言いますが
『わからないので適当に書いておいてください』は絶対通用しません!

主治医意見書もれっきとした公文書です。
虚偽を書くわけにもいかないので、その場合は『詳細不明』と書かざるを得ません。

経過のみならず、『詳細不明』が多数あると
どう評価受けるかはお察し下さい!

日常生活における外出・移動状況

病院受診の際は
ご家族の付き添いや送り迎えがあることが多いため
その方の日常的な外出・移動状況はなかなか把握できません。

○お1人で外出が可能ですか?

できるなら
・公共交通機関は使えますか?
・近所のお散歩程度ならできますか?

できない場合
・家では独力で歩いたり動けますか?
・ずっとベットで横になっていますか?
・歩ける場合は歩行器は必要としますか?
・歩けない場合でも車椅子に乗って過ごすことはできますか?
・車椅子は自分で操縦できますか?

○食事やトイレの時はお1人でできますか?
・自分で1人でできる
・食事は介助があればできる

車椅子や歩行器を使用している場合
・移乗からすべて1人でできる
・移乗に介助が必要
・全部介助が必要

など、日常生活をどのように過ごしているか?の情報が大切になります。

数分間の外来だけでは
その方の日常生活の様子が把握できないことも多いので

・外出はしないけど、家では歩行器を使ってテレビを見ていたりしている
・ベットからほぼ動かないけど、トイレと食事の時だけは車椅子に乗せて移動できる

などなど

こうした自宅での様子も積極的に医師に伝えましょう。

 

社会生活について

下記が1人でできるかも大事な情報です。

・お金の支払いや管理
・処方した薬の管理
・着替え/排泄/食事などの日常生活
・家の掃除/ごみ捨て/洗濯等の家事や炊事

先ほどの外出や移動に関してと同様、
自宅の様子がわからないため是非ご家族に情報を頂きたいところです。

それ以外のご家族の困りごと

認知症の方がご家族でいる場合、特に以下のことで悩まれることも多いです。

・暴言暴力
・徘徊
・妄想(物盗られ妄想など)
・幻視幻聴
・介護抵抗
・火の不始末
・お金の不始末(不要なものを次々に契約する)

などなど

気になる症状等があればどしどし伝えましょう。

スポンサーリンク

日常生活には大事な情報が沢山!医師任せにせず関わりを持ちましょう

以上、主治医意見書に関するポイント等をご紹介しました。

実は主治医意見書には

・ご本人の利き腕
・身長 / 体重
・麻痺 / 関節の拘縮 / 痛み / 褥瘡(床ずれのこと)

なども記載するところもあります。

外来のみでは把握が難しい日常生活の項目や
場合によっては他科の疾患のことまで記載/評価しないといけません。

これが主治医意見書の難しさです。

だからこそ
医師同士で押し付けあいとは言わないまでも
断られるという事態が生じるのかもしれません。

そうした事態を防ぎ、快く適切な評価を記載してもらうためにも

・介護を要する主の疾患を定めてその先生に依頼をすること
・記載する上で必要となる日常生活の情報を準備しておくこと

この2点のポイントを抑えるようにしましょう!

しろすけ医師
しろすけ医師

最後に…
主治医意見書の内容だけで審査が決まることはありません。

介護認定調査や会議を経て結果が出るためあくまで一意見書とも言えます。
ただ、ご本人の今後に影響する重要な書類ではあるので、
『医師に記載を任せれば大丈夫』とは思わず、しっかりと自分たちができることもしていきましょう。

対応策さえわかっていれば怖いものなしですね!

次回は介護認定調査の際のポイントについて解説を致します!

タイトルとURLをコピーしました