部下の様子が最近気になります。
笑顔が減って、明らかに仕事のスピードも遅くなりました。
周囲からはうつ病なのか?とも噂されているようです。
上司としてどう対応するべきでしょうか?
こんにちは しろすけです。
ご質問ありがとうございます。
今回は部下がうつ病かも?というお話ですね
部下の調子が悪い時に上司として
どう行動するべきか
何をすると実は地雷となるのか
というお話をしていきます
状態確認と治療促し
まずは本人の悩みや困り事をしっかりと傾聴しましょう。
プライベートのことであれば
話をしてもらえないこともあるかもしれません。
一過的な悩みでしたら時間経過とともに
解決に進むこともありますが
・考え込んだりぼーっとする時間が増えて手が止まる
・疲労 / 食欲不振 / 活気のなさ が目立つ
など
明らかに長期の体調不良や勤務状態に影響が出始めていたら、
医療的介入の検討が必要です。
その際には
会社内の産業医や保健スタッフに相談するよう促しましょう
※会社の人事部にメンタルヘルス担当の部門があればそこでも可
産業医が不在もしくはメンタルヘルス部門が機能していないなど場合は
医療機関に受診するよう促しましょう
【注意点】
いきなり『精神科受診したらどうだ?』はNGワードです
間違っても
『鬱なんじゃないか?』
『あなたは病気だ/おかしい』
というようなことは言わないこと!!!
本人にとって、とんでもない言葉の刃となることがあります。
精神科医がいうのもなんですが、
精神疾患なの?と疑いの言葉をかけること自体を偏見とかパワハラと捉えられてしまいかねません。
※たまに患者さんから、上司へ相談したら笑いながら冗談めいて↑のような台詞を言われたというエピソードを聞くことがあり、その配慮のなさに憤りを感じるときがあります。
例え、本人の状態が明らかに悪い場合であっても
上司としては『まずは医療の専門である産業医や保健スタッフ等に相談してみてはどうだろう?』
と促すに留めてください
【オススメのアプローチ】
まずは『体調大丈夫か?』など本人の困り事を聞いてみましょう
『〇〇の症状で辛いなら、病院に行って相談してみたらどうだろう?』
『あなたが辛そうに仕事をしているのは上司としても心配、専門の医師に一度診察してもらって少しでも楽になってほしい』
など
相手に配慮したアプローチが望ましいです
精神科医としては
本当に辛く動けなくなってから受診に来るのではなく、
もっと以前から気軽に受診して頂きたいものと考えています。
『精神科ってどのタイミングで受診するんだ?』
という疑問が浮かんだ方は、
精神科受診のタイミングに関するコチラの記事を
是非ご一読下さいませ
初めての精神科!受診するタイミングっていつ?予約時の注意点も紹介
治療経過の把握
定期的に本人の状態確認をしましょう。
(会社の対応上、人事部が行う場ケースもあり)
病院受診後、医師より休職の指示が出ることもあるので
休職の有無や休職期間など
休職に関わる事項については確認しておきましょう
本人へ1か月に1度程度、治療の進行度合いも含め状況確認をしましょう。
その際の注意点です!
仕事の調整も大変だと思いますが、そうした都合を本人には当てつけないこと心の中では
『いつまで休職しているつもりなんだ』
『診断書が延長・延長と続いているじゃないか!』
『いつまで迷惑かけるつもりだ』とつい思ってしまうことがあるかもしれません。上司としての立場やお気持ちは十分にわかりますが
これは口に出してはダメです。そんな時ほど
『焦らず治療してください、こっちは大丈夫だから』
この言葉をご本人には言ってあげてください。
実際の診療現場でも
患者さんがから
『上司に連絡したら、焦らず治療してくださいって言ってもらえました』
と笑顔で話される方が少なくありません。
こうした方々は治療にも集中でき
前向けに取り組める傾向にあります。
上司として、一時の感情に飲み込まれないように注意しましょう。
【注意点②】
休職期間が延びてくると
治療に関して不信感を感じることもあると思います。
しかし、
治療に関しては口出ししないことをお願い申し上げます。
これは精神科医として
治療にゴタゴタいうな!というわけではありません。
休職期間が徐々に伸びていき、
一番不安に感じているのは紛れもなくご本人です。
不安に感じている中で、家族や職場にも色々言われる…
その孤独感を想像してみて下さい。
一番辛いのは本人である点をご理解頂き、
ご本人のためのご配慮をお願いします。
『そもそも休職ってどんな流れ?』
という疑問が浮かんだ方は
休職に関するコチラの記事を是非ご一読下さいませ
職場の雰囲気を守る
休職者だけでなく、
その人が所属する部署・チームのスタッフへの
フォローや雰囲気作りを行ってください
しろすけは精神科医として
治療を行っている休職者本人と接していますが、
常々気にしている方々が他にもいます。
それは休職したことにより、
その仕事のしわ寄せを受けている部下や同僚の方々です
※といっても医師としては何もできないのですが…
休職はその性質上、医師の判断があり次第、突然に指示されることがほとんどです。
そのため、
すぐに人員補充することができず
また、復職も考えると現状のマンパワーで乗り切ることが多いと思います。
その場合
その人の仕事を肩代わりしてくれている人が必ず発生します。
給料は変わらず仕事だけが増えてしまう…
しかも、これ
見た目上複数人にかけて業務調整をしたとしても
結果としては
体力があって文句も言わず
仕事が早い優秀な社員の負担が増えます。
実はこうした暗黙的業務過多の調整は、
後々優秀な社員が退職してしまうきっかけになってしまうことがあります。
これは慢性的な人員不足の医療業界も同様です(身にしみて感じてます。)
『会社はうつや病気の人だけ丁重に扱って、仕事のしわ寄せを受けているこっちはどうでもいいのかよ!』
という感情が生まれるのは当然と言ったら当然…
この感情は
のちに休職患者が復職した時に軋轢にもなります。
この記事を読んでくださっている方にもし部下がいらっしゃるなら
と通常の業務 + α で行うことも沢山出てきます
やることいっぱいだな…と感じるかもしれませんが
それが上司の仕事です。
役職があり、給与が人より高く責任があるのです。
上司がいかに部下の健康や働きやすい環境を気にかけるかで
職場の生産性が大きく変化する
というのは心理学的研究からも明らかな事実です。
休職中の人の仕事を肩代わりしてくれている同僚・部下への配慮やケアもお忘れなく!!
医療と会社をつなぐスタッフと連携する
休職者と会社の間に専門職を挟むことで
情報伝達の齟齬をなくしスムーズに医療や復職につながるようになります
部下がリワークなどに参加した場合
リワークスタッフが会社との連携の手助けすることがあります。
例えば
本人が病状説明がうまくできない場合や
会社にはなかなか言いづらいことがある等の場合
リワークスタッフが代理で会社と連携こともしばしば
是非、リワークスタッフと積極的に連携をとるようにしましょう。
そもそもリワークってなによ?という疑問を抱いた方は
※リワークに関して詳しく説明している記事はこちらにありますので
ご一読ください
リワークってどこで受けると良い?理解しやすい特長まとめ【比較表】
復職の準備
治療が進み、復職が可能な段階になってきたら
主治医との面談をオススメします。
『復職可能、もしくは復職可能の指示がそろそろ出そう』
という報告が本人からあった場合
一度診察に同席させてもらうことを
しろすけはオススメしております。
『部下の診察に同席できるのですか?』
という質問を日常診療でもいただきますが、
基本は患者さん本人の同意があればokです
(もちろん、同席が診療の妨げとなる場合はNGです)
主治医に
今後の治療計画や
復職に当たって注意すること
などを聞いてみてもいいでしょう。
実際にクリニックや病院に上司の方がいらして
復職の際の時短勤務のスケジュールを持参されたり、
復職後の席位置の相談をされたりする方もいます。
ご本人の性格傾向や得意不得意など
我々もお答えできる限りは対応させて頂きます。
ただし…
混み合っている外来診察の当日に
『今日上司来ているのですが』と言われても、かなり困ります!!!
診療同席する場合は前もって必ず主治医に連絡お願いします
※連絡はご本人経由で構いません。
※前もってご連絡がないと予約調整ができず十分な説明もできないこともあります。
業務内容や労働環境の調整
復職する場合には業務内容や労働環境の調整も必要になることがあります。
理由としては
病気になる前と後では
本人の身体面・精神面が大きく変化しているため
復職 = 休職前の状況にそのまま戻せばいい
というわけではありません!
本人の状態と職場等の状態を適切に調整するよう
心掛けていきましょう
やることいっぱいだなと思われたそこのあなた!
全部が完璧にできる必要性はありません。
むしろ努力目標の部分もあります。
しかし、あなたの努力が
多くの人の治療の手助けとなり
社会復帰を促進することは間違いありません!