精神科あるある特集について
精神科って外部の方から見ると
色々な疑問や質問を頂くことも多くあります。
逆に内部で経験を積むと
『ならでは』『あるある』も出てきます。
こうした疑問やあるある小話を
色々な場面を介してご紹介したいと思います。
✅精神科のことを知りたい方や興味がある方
✅これから関わる方
✅すでに関わっている方
色々な方に御覧頂き精神科のことを
少しでもイメージしていただければと思います!!
あるある&疑問特集【入院編①】
今回は精神科あるあるの中で
【入院について】
ご質問にお答えしたいと思います。
病棟運営の裏側を良く知るゲストとして
前回に続き、10年以上精神科救急病院の事務をしていた
【たぬき氏】にお越し頂きました!
外来編から引き続き入院編でも回答させて頂きます!
関連:精神科の外来通院のあるある・疑問について
希望すれば入院はできるのですか??
精神的に辛くて入院をしたい場合、
希望すれば即入院はできるのでしょうか??
入院は医師の指示が必要
入院日は入院可能日を調整の上での受け入れとなります。
外来患者さんから入院の希望があった場合
『誰でも入院OK!』
というわけではありません。
というのは
入院を受け入れる病床は限りがあるものです。
✅精神症状の重症度
✅切迫性
✅治療環境としての適切性
などを鑑み
入院したほうが良いと判定した場合に
医師から入院の指示を出します。
また入院するにしても
病棟や病室の種類が複数ある場合は
どの病棟・どの病室に入院するかも大切なこと
なので入院時に決定しておきますね。
そのため、入院日については
上記で決めた病棟・病室のベットの状況と
入院するご本人の都合を鑑み予約日を決定します。
注意点として…
救急の精神科病院等であれば
入退院が日々沢山発生しベット状況も常に変化します。
入院予約をとったとしても
来院できなかった…となってしまうと
待機中の別の方が先に入院になってしまうケースも。
医療も資源に限界があるものなので
常に提供できるとは限りません。
『いつでも治療を受けれる』
『いつでも入院できる』
ということは決してありませんので
その点ご注意いただければと思います。
実は入院予約はベットの稼働状況が大きく関わる
しろすけ先生のおっしゃるとおり
本来入院する際には医療上の必要性があることが前提です。
ただし裏話として…
入院のしやすさはベットの稼働率にも影響されます!
例えば…
100床の入院病床がある病院があったとします。
A:80人入院していて20床のベットが空いている場合
B:95人入院していて5床のベットが空いている場合
入院をしたいと思っていた場合
AとBどっちが入院しやすいと思いますか??
……そう、答えはAです!!
病院の運営側の本音としては
ベットが空いているならできる限り埋めたいと思っています。
つまり
【ベットに余裕がある = 入院の受け入れ基準が甘くなる】
【ベットに余裕がない = 入院の受け入れ基準が厳しくなる】
と言い換えることができます。
人気のある飲食店の予約が取れないのと同様、
ベットが埋まりやすい大学病院 / 救急病院が
なかなか入院しにくいのは同じ理由なのです…
入院すると入院期間ってどの程度になりますか??
精神科に入院を検討しています。
『精神科は入院するとなかなか退院できない』
と聞きました。
入院期間ってどの程度になるのでしょうか??
ご本人の状態や入院の治療目標、病院の機能等によって様々
平均在院日数(入院日数)は『274.7日』
※平成30年12月18日 最近の精神保健医療福祉施策の動向について 厚労省参照 ただし実際の入院期間は
入院する病棟や治療方針によって様々。
急性期病棟 = 1~3か月以内
慢性期病棟 = 3か月以上
というのが一般的です。
精神科全体の平均在院日数はなんと約9か月!
実はこれでも
徐々に減少しているのですが驚きの数値ですよね…
といってもこの数値はあくまで平均値!
実際の入院期間の目安としては
✅急性期病棟 = 1~3か月以内
✅慢性期病棟 = 3か月以上
というイメージでお考え下さい。
ではなぜ平均が9ヶ月にもなるの??
と疑問に感じるかも知れませんね…
というのは…
精神疾患はその特質上
地域社会で生活を営める環境や支援が整わず
なかなか退院できない…
というケースもあります。
その場合、
調整ができるまでは退院できず
入院が長引びいていきます。
精神科の慢性期療養病棟では
地域での生活基盤が保てず
10年以上入院している患者さんがいることも…
逆に、治療が完了し
1か月以内、もしくは2~3か月で退院される方も
多数いらっしゃいます。
平均在院日数は
あくまで平均値でしかありません。
入院期間はそれぞれの
病棟の機能・役割や治療方針によって
大きく異なってきます。
もしご自身が入院を希望する場合は
期間についても主治医に確認をしていくようにしましょう!
退院後の環境調整が入院期間に影響を与える
退院後の環境が整っているかも大事!
入院するとなると
『いかに早く病状を回復するか?』に
着目されやすいですが、実はそれと同等に大事なことがあります。
それは
『退院先の確保と環境を整えること』です。
そもそも…
入院しても退院先がないと退院できません。
例えば…
✅病状によるトラブルにより借家の退去を命じられて入院になった
✅精神症状が悪化し元々入所していた施設に受け入れてもらえない
✅家族が退院後の受け入れができなくなる
など
精神科では病状の悪化により
周囲とトラブルが発生することで
入院と同時に退院後の戻り先や支援がなくなってしまう
というケースが結構な頻度で発生します。
そうしたケースだと
治療上の必要性はなくなったのだけど
退院先を確保することが困難で
入院期間が長引いてしまうこともしばしば…
また、退院したとしても
支援環境が整っていない状況だと
病状がすぐに悪化し再入院になってしまうことも…
こうしたケースは社会的入院とも呼ばれます。
入院期間の平均値が長い理由として
退院先の確保や支援環境の調整が
なかなか上手くいかないというのも
原因の一つとも言えるのです。
現在、精神疾患の患者さんが
地域に根ざして生活が出来るよう
社会的基盤を整える制度が改変されていますが
こうした背景があるからとも言えるでしょう。
精神科へ入院するとどのような治療を受けれるのですか?
外来で治療を受けるのと入院をして治療を受けるのは
何が違うのでしょうか??
医療者が常時介入&支援ができるのが入院治療の強み
医療職が常時いて観察&支援できる環境であるのが強み。
それにより
✅細やかな薬の調整を実施
✅医療職による適切な支援の提供を行う
✅急変あるいは状態悪化時の即時対応する
✅必要に応じて行動制限による保護を行う
などが外来との違いと言えます。
入院を行う場合、
そもそも状態が不安定で悪化する恐れが高いケースとなります。
そのため医療職による観察を強化し
臨機応変&集中的に治療を行っていきます。
基本、精神科は薬物療法が主体。
入院時には細かい処方調整を行うことで
病状回復に努めます。
電気けいれん療法(ECT)が実施できる病院では
薬物療法と併用して積極的に行うこともありますね。
その他、医師による精神療法、
作業療法士によるリハビリなどにより
時間をかけて病状回復に努めていきます。
入院による環境変化で効果があることも
時折あることなのですが…
✅支援不足により病状悪化が見込まれるケース
✅家族関係等の問題で病状が悪化しているケース
などでは
入院環境にて適切な支援を受けたり
問題から一時離れることで病状が回復することもあります。
いわゆる、休息(レスパイト)入院
と呼ばれる入院もそうですね。
病状や治療そのものに改善が必要というより
『環境』に介入の必要性があるケースと言えるでしょう。
その場合、
治療云々より環境を整えることが目下の課題…
といっても
✅福祉・介護サービス等の制度も利用対象外がある
✅人間関係への介入も限界がある
ため
環境がベストに整えれることは
現実的に多くはありません。
何かしら不便・不都合がある中で
疾患と向き合い生活をされているのが実態です。
こうした休息的な入院も
必要なのが現状の日本の精神科医療です。
関連:
まとめ
他にも沢山質問もありましたが
今回は以上とさせて頂きます。
引き続き回答をさせて頂きますので
疑問点ありましたら要望下さい!
たぬき氏は色々ご回答ありあとうございました!
こちらこそ、楽しく回答させて頂きました。
今後も何かあれば
事務および運営側としてお答えさせて頂きたいと思います。
宜しくお願い