子供を亡くした母からの相談…辛さや苦しさを和らげるメッセージ

病気

65歳女性です。
先日息子を突然亡くしました。

 

昨日まで元気だったので、
全く心の準備もできませんでした…

息子は数年前から精神的に調子を崩し
私たち夫婦と生活していました。

 

家の仕事を助けてくれたり、
いつもみんなの支えでした…

 

今でも家に帰ると、
『おかえり』と迎えてくれる気がして
家中を探してしまいます。

 

息子がいないのに、
世界が何事もなかったかのように
進むことさえ理解できません。

 

誰かに相談したくても、
誰に話していいのかわかりません。

 

夫など家族に話したくても、
家族は仕事に逃げてしまって聞いてくれません…

私一人が家に置いてきぼりです。

 

どうしたら前を向けますか?
とても苦しいです。

しろすけ医師
しろすけ医師

大切なご家族がお亡くなりになったことを
まずはお悔やみ申し上げます。

 

とてもお辛かったですね…

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精神科医としてお伝えしたいこと / メッセージ

しろすけ医師
しろすけ医師

今回は何かを解説するなどではなく
ご相談内容を受け

 

ご相談者さんの立場 / ご家族の立場  を鑑み、
精神科医としてお伝えしたいなと思ったことを
まとめてみました。

少しでもご相談者さんの辛さや苦しみが軽減されれば幸いです。

 

悲しみと辛さは家族全員が感じている

家族みんなで悲しみに暮れる時
一人ぼっちな気持ちになりますよね…

特に、お子さんを亡くされた親御さんは
『なぜ自分より先に…』と
深い悲しみや孤独感に襲われることと思います。

とてもお辛いと思います。

ただご相談者さんだけでなく
ご家族全員、とても苦しんでいらっしゃるのではないでしょうか…

泣いていない = 悲しくない
仕事にいく = 大丈夫だから仕事をする
というわけではありません。

泣いて悲しみを共有し癒し合うのではなく
泣くのを堪え、どうにか家族を支えようとしているのではないでしょうか。

本当は悲しみに暮れていたいけど
世の中は一緒に立ち止まってくれないので、
どうにか仕事をしているのではないでしょうか。

ただ一つ言えることは…

ご家族を失うことは
家族全員にとって本当に辛く悲しい出来事であり
誰もがみな

助けて欲しい…
辛くて悲しい…
どうにか時間が戻ってほしい…

そう心で叫んでいることでしょう。

あなたは1人ではありません。
全員一緒のお気持ちですよ。

お互いに距離をとることも必要

こうした悲しみなど強い感情が発生する場合
身近なご家族に対して、

自分と同じ感情であること
自分と同じ状態であること
自分と同じ行動をすること

を求めてしまいがちです。

ただ、先にも申し上げた通り
心に抱く感情は同じでも、
それぞれが置かれている状況や環境が違えば
とる行動も別になることが十分にあります

そうした時、お互いが近くにいると

『なんで私の気持ちがわかってくれないの?』
『なんでそんな行動をとるの?』

私だって大変なんだっていう気持ちから
相手に反発をしたり批判をすることで、不要な争いが生まれてしまう可能性も…

お互いが責めてしまいそうなときは
ご家族といえど、一時距離を取るようにしてください。

家族以外に話をして気持ちを落ち着かせる

今は自分のことだけを考えて
なるべく気持ちを落ち着かせ休んで欲しいと思います。

ただ休むにしても、
今背負っている感情が重いと
身動きもとれないし休むこともできません。

感情を吐き出し少し身軽になることが大切です。

時折、こうした悲しい出来事があると

私は悲しんでいなければならない!
身軽になるのは許されない!

と捉える方もいらっしゃいます。

ただ
身軽になる = その出来事を軽んじる
ということではありません。

少し身軽になることで、
その悲しみを更に受け止めることができるのです。

家族以外にも
誰か信頼できる人がいれば
隠さず取り繕わず話をしましょう。

吐き出すだけで良いのです。

もし、他人にこんなことを話して良いのかって
心配するならこう考えて頂ければと思います。

『優しさの前借り』をさせてもらうのだと…

お借りした優しさは
後でも良いので必ず返せばいいのです。

そう思い、たっくさん前借りしてください。

一人の人にたくさん借りるのが心苦しければ
数人に分けても良いでしょう。

今は相談者さんが休息することがとても大切なのですから。
ご家族もあなたの回復を心から願っていますよ。

相手に苦しみや悲しみの共感は求めない

優しさの前借りをする上で注意点がひとつだけ…

苦しみや悲しみをわかってもらおうとは思わないようにしましょう。

苦しみや悲しみは体験した人にしかわかりません。

『なんでわからないの』
『なんで理解してくれないの』
と相手に求めてもわかるはずがないのです…

自分の辛さや悲しみがわかるのは
残念ながら自分自身だけあり、
またその辛さや悲しみを昇華できるのも自分自身だけです。

 

わかってほしいと相手に求めること
誰かにどうにかしてもらいたいと縋ること

それは求めすぎであるということをご理解頂き、
相手に求めないようにしましょう。

休息と雨宿りの繰り返し

誰かに話すことで
豪雨の中、少しだけ雨宿りができたとしても
雨が簡単に止むことはありません。

豪雨の中に雷が混じってくるかもしれません。
またある時は小雨になる時もあるかもしれません。

雨が完全に止むのはまだ見ぬ先ですが
雨宿りを続けることで、先に進むことはできるでしょう。

いつか雨が止むその時を、しろすけも願っています。

話せる相手がいない場合に頼る相手

もし、周囲の誰にも話せない…という場合は
精神科医を頼ってください。

しろすけも
大切な人を亡くした方を何人も診察してきました。

そして何度も経験してきました。

そんな時は
どんな精神療法も心理学的な知識も役に立たないことを…

その代わり時間が許す限り
しっかりと話を聞こうと思っています。

どんなに話がまとまらなくても
脱線を繰り返しても

一度の診察には限りがありますが
足を運んで頂けるなら、必ずお聞きすることを約束します。

精神科の診察以外に
カウンセリングを選択されてもいいでしょう。

日本ではまだまだ馴染みがないですが
欧米諸国では『セラピー』はとても身近なものです。

診察よりも
さらにしっかりとした時間の確保も可能なので
ご利用頂いても良いと思います。

今を生きること

いつかいつか
前を向ける日が来るといいなと願いますが
時に後ろ向きに生きたっていいんですよ。

常に真正面から立ち向かったり
乗り越えようとすることが正しいとは限りません。

後退したり退避することが大切な時もあります。
また横からするっと抜ける時も必要かもしれません。

大事なのは
残された人たちが『今を生きている』ということです。

私しろすけも前向きに生きてるつもりで
時に思いっきり逆走したり立ち止まっていることもありますが
それもまた『生きている自分』

落ち込んでいてもいいし
悲しみに暮れていてもいいし
塞ぎこんでいてもいい

ただ今を生きていることを
大切にしてもらえれば幸いです。

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